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屈強な男性のブログ

チャンピオン・ジャンプの感想を中心に、日々の雑記とか諸々

週間少年チャンピオン7号 感想

チャンピオン マンガ

ベスト1『 兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』

 

本作品、というより、

木々津克久という作家がチャンピオンで連載した

名探偵マーニー』『兄妹・・・』と続く少女探偵の

まとめというか、総括というか、そういう回だった。

 

マーニー(名探偵マーニーの主人公)と蛍(兄妹の主人公)は

「推理力の高い女子高生」という設定がソックリで、

言い方は悪いが「キャラクターの焼き直し」に近い存在だった。

 

ただし、蛍のほうがタチが悪い。

上っ面を取り繕い、打算をもって他者と関係をつくり、

有利な状況のなかで立ち回る。

 

頼りになる大人がいない環境で育ったせいだし、

その打算は常に人助けのためだけど、ヒロインとしては可愛げがない。

 

そういう「計算や打算」こそが蛍の特性であり長所であり、

「ゆがみ」だ。

 

今週は、その「ゆがみ」こそがテーマだ。

 

木々津作品は「ゆがみ」のある人間がたくさん出てくる。

たいてい変態であり、彼らは犯罪者として逮捕されたりする。

 

作者自身はそういう「ゆがみ」を社会的な良し悪しとは別に、

あえて肯定的に描いていた。

 

「ゆがみ」が生み出すマイナスや悩みから一歩おいて、

爬虫類の生態を観察する学者のような目線を、

作者はずっと保っていたと思う。

 

進化のために足を失った蛇を研究するように、

醜いかろうと「ゆがみ」があるから生命は輝いているのではないのか。

むしろその「ゆがみ」とも取れる性質こそが、美しいのではないのかと。

 

研究対象が蛇であろうと、人間であろうと、その目線はあえて変えない。

その冷徹さが木々津克久という作家の魅力なのだが、

今作品は、一歩、青臭い部分に踏み込んでいる。

 

妹(蛍)の独白と、

それに続く兄の回答がそれだ。

 

蛍の独白

友達はたくさんいる・・・

意図して作った

社会生活を有利に運ぶために必要だからだ

じゃあ私に

心をさらけ出せるような友達

親友のようなものは

いままでいただろうか・・・・・・

 

兄の答え

人生は計算だけで生きようとするには 長すぎるんだよ

計算はいずれ打算になり それはいつか破綻する

計算だけでもダメ

感情だけでもダメ

もっと失敗も恥も計算できないことをいっぱい経験して

人はやっと大人になるんだ

 

 

「人生は計算だけで生きようとするには 長すぎるんだよ」

というのは至言だと思う。

そして、 人間観察に長けながら、人生論を語らなかった、

木々津克久という作家の本音だとも思う。

 

たぶん、作者も、連載を重ねるうちに変質してきて、

冷徹な学者の枠組みから踏み出し、

生身の人生をキャラクターに重ねて

ついつい語りたくなったのかも知れない。

それが『作家らしくない』ことだとしても。

 

いち読者として、こういう変質は歓迎するし、感動もする。

僕だって変わり続ける環境に身をおく生活者であり、

日々、変質している。

「人生は長すぎる」

予想もつかない変質はいつだって起こりうる。良くも悪くも。

良い方向の変質であれば、喜びとともに受け入れるべきだと思う。

 

兄妹の問答、兄の答えの続き

だから・・・・・・

蛍のことを思う友達ができたと聞いて

僕はとても嬉しいんだ

 

人間は変わり続けていく。

作家であれ、読者であれ、キャラクターであれ。

 

もし変質を己で感じたとき、

良い変質であれば受け入れるといいと思う。

 

成長という言葉を用いたら大げさになることでも、

いちいち祝福すればいいと思う。

 

 

 

※マーニーと蛍の違い

理論派や周りの変人たちに振り回されるマーニーに比べて、

蛍のほうが周りの人間関係を利用する分、性質が悪い。

他社の人間関係を利用したり(桃園さんの恋心とか)

色気で誘ったり・・・

(蛍は自分が美少女だと自覚している、小悪魔的である)

 

※木々津作品のほかの主人公について、

ヘレンesp』のヘレンや『ふらんけんフラン』のふらんは毛色が違う。

マーニーや蛍のような等身大の少女として描かれていない。

 人間を高みから見下ろす、高次元の存在だ。

 

ヘレンは妖精・座敷童の特性で、ちいさな幸運を司る。

フランは神様・悪魔の特性で、天変地異を司る。

 

 

 

※ヘレン、マーニー、蛍の家庭環境

ヘレンは三重苦であり、資産家のオジサマの支援なしでは生活できない。

(オジサマは血縁上もオジサマであり、100%いやらしい意味は含まれない)

 

マーニーの父親は刑事を辞めたしがない探偵、母親は凄腕弁護士。

(こう書くと名探偵コナンの夫婦とソックリだなあ)

 

蛍の親父は町工場の社長で、母はスナック経営。

両方とも儲かっていないため、子沢山の家庭のことはすべて長女蛍が背負う。

ほかの兄妹にも仕事を割り振ればいいのに・・・

全部、一人で背負っちゃうのが蛍の性分で、長所でもあり欠点でもある。

 

 

※僕はただのチャンピオン読者であり木々津克久研究者ではない。

 記述には誤りも含まれている。